イノテックは、半導体の『検査装置』『設計ソフト』『組込みシステム』を手がける東証プライム企業。2026年3月期は売上467.4億円(前期比+11.3%)、営業利益31.1億円(同+64.7%)と大幅増益となった。性格の異なる3事業がほぼ同規模で並ぶポートフォリオ型が特徴。
パッと見でわかる
半導体の『検査装置』『設計ソフト』『組込みシステム』を手がける、性格の異なる3事業がほぼ同規模で並ぶポートフォリオ型の技術企業(1987年設立・横浜)。
売上高 FY2026/3
467億円
前期比 +11.3%
営業利益
31.1億円
+64.7%
営業利益率
6.7%
前期 4.5%
テスト事業 売上
184.6億円
+23.2%
- 利益構造
- 検査装置・設計ソフト・組込みの3事業がほぼ同規模。なお純利益は固定資産売却益29億円(一過性)で大きく膨らんだ点に注意。
- なぜ今
- 生成AI・半導体投資を背景に、テストソリューション事業が伸長。
① どんな会社か
イノテックは、半導体に関わる3つの事業を束ねる会社。1987年設立、横浜市に本社を置く東証プライム企業で、連結従業員は約1,620名(同社開示)。もともとは商社として始まり、買収を重ねて自社製品を持つメーカーへと姿を変えてきた。
3つの事業は、半導体の検査装置を作る『テストソリューション』、設計ソフト(EDA)の販売と設計支援を行う『半導体設計関連』、組込みシステムや車載ソフト検証・決済などの『システム・サービス』。同社は『3つの事業がだいたい同じぐらいの規模』と説明している(ログミー報道)。
- 1商社として創業(半導体設計ソフトの販売が源流)
- 2買収で自社製品を取り込む(台STAr・ガイオ・レグラス等)
- 3テスト/設計/組込みの3事業に集約(ほぼ同規模)
- 4半導体メーカー・ファウンドリ・自動車メーカーへ供給
出典:イノテック 公式IR・ログミーFinance説明会を基にした概念図。
- テストソリューション:半導体テスター・プローブカード等の検査装置(売上184.6億円・前期比+23.2%、2026年3月期)
- 半導体設計関連:EDA設計ソフトの販売と設計支援。ライセンス制で安定収益(創業来の主力)
- システム・サービス:組込みボード・車載ソフト検証・クラウド決済・AIカメラ
出典:イノテック 公式IR・2026年3月期決算・ログミー説明会。
② 強み・濠(moat)
強みは、半導体の『検査・設計・組込み』を横断して持つ複合事業の幅と、買収で築いた自社製品の収益基盤にある。商社時代の顧客接点を土台に、装置・ソフト・サービスを組み合わせて提案できる点が他社と異なる。
- 幅:半導体の検査・設計・組込みを1社で横断できる複合事業
- 安定収益:EDA設計ソフトはライセンス制で売上が読みやすい(創業来の主力)
- 自社製品化:商社から買収(台STAr・モーデック・ガイオ等)で製品メーカーへ転換
- コスト訴求の検査装置:必要最小限の機能で安価なテスターを作り、顧客のトータル検査コストを下げる戦略(社長コメント)
同社IR・ログミー説明会をもとに整理(質的)。
出典:イノテック 2026年3月期決算。半導体検査の需要回復が牽引。
③ 置かれている状況
追い風は半導体の検査・設計需要。2026年3月期はテストソリューション事業の改善と半導体設計関連の堅調さで増収増益となった。一方、検査装置は半導体メーカーの設備投資サイクルに左右され、市況の波を受けやすい。
- 追い風:半導体の検査需要回復テスター売上↑
- 追い風:設計ソフトの安定需要ライセンス収益
- 追い風:車載ソフト・決済の成長サービス拡大
- 逆風:半導体の設備投資サイクル受注変動
- 逆風:特定顧客への依存発注動向に左右
論点の見取り図(質的整理)。投資判断ではない。出典:イノテック IR・報道。
④ 業績の見方
2026年3月期は売上467.4億円(前期比+11.3%)、営業利益31.1億円(同+64.7%)。営業利益率は約6.7%へ改善した。なお純利益41.1億円(同+242.6%)は固定資産売却益29.1億円という一時的な特別利益を含むため、本業の実力は営業利益で見るのが妥当。
出典:イノテック 2026年3月期決算。FY2027は会社予想(+7.0%)。
出典:イノテック 2026年3月期決算。営業利益率は実績約6.7%。FY2027は会社予想(+19.0%)。
出典:イノテック 2026年3月期決算。固定資産売却益29.1億円(特別利益)を含む点に注意。
出典:イノテック 2026年3月期決算。期末に特別配当50円を含む。FY2027予想は130円。
- ① テストソリューションの売上:半導体検査需要を映す本業の柱
- ② 営業利益(率):特別利益を除いた本業の実力。FY2026/3は約6.7%
- ③ 自社製品比率:商社からメーカーへの転換の進み具合
企業を読むためのフレーム(質的整理)。
⑤ リスク
最大の論点は、半導体の設備投資サイクルに業績が左右される点。検査装置は顧客の投資意欲が冷えると受注が細りやすい。
- 市況依存:半導体メーカーの設備投資サイクルで検査装置の受注が変動しやすい
- 顧客依存:キオクシアが最大の納入先と社長が言及(ログミー報道)。比率は非開示だが大口顧客の発注動向に左右されうる
- 一時的利益の反動:2026年3月期の純利益急増は固定資産売却益(特別利益)を含み、来期は剥落する
- 事業の幅ゆえの複雑さ:性格の異なる3事業を抱え、どこかの不調が全体に波及しうる
- 為替:海外取引があり、円高は逆風になりうる(影響度の詳細は非開示)
リスク論点の見取り図(質的整理)。出典:イノテック IR・報道。
参考文献
公開日 2026年6月19日(一次情報=決算短信・決算説明会等に基づく)