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銘柄研究5991
複数のプラッタと磁気ヘッドを横から見たHDD内部

NIPPATSU / INVESTOR ANALYSIS

売上の主役は自動車。利益の主役は、HDD用の薄板ばね。

日本発条の2026年3月期は、HDD用サスペンションなどのDDSが売上の15.5%ながらも、全社営業利益の約57%を生みました。小さな部品が大きな利益を生む理由を、HDDの実物から分解します。

DDS売上の構成比率15.5%
DDS利益の構成比率約57%
HDD用サスペンション世界シェア50%以上

写真:Gunnar Wolf / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・画面トリミング)

日本発条(ニッパツ)5991・東証プライム
更新 2026年8月4日・読了目安 約9

日本発条は、単純な「自動車部品会社」ではありません。売上規模をつくる自動車事業と、「AI・クラウドのデータ保存を支えるHDD用部品事業」が同居する会社です。

投資家として最初に見るべきなのは、売上高の大きさではなく、どの事業が利益を生んでいるかです。その答えがDDS。HDD用サスペンションと半導体検査用部品を含む、営業利益率20.6%の事業です。

01 / PROFIT STRUCTURE

売上と利益が逆転する。

2026年3月期決算資料によると、自動車関連は売上の土台、DDSは利益の中心です。

DDS事業の売上高1,267億円

全社売上の15.5%

DDS事業の営業利益260億円

全社営業利益の約56.9%

営業利益率20.6%
事業売上高 / 構成比営業利益 / 構成比利益率
懸架ばね自動車の足回り
売上
1,674億円 20.5%
利益
7億円 1.5%
営業利益率0.4%
シート自動車用シート
売上
2,925億円 35.8%
利益
80億円 17.5%
営業利益率2.8%
精密部品ばね・精密加工品
売上
1,056億円 12.9%
利益
36億円 7.9%
営業利益率3.5%
DDSHDD・半導体部品
売上
1,267億円 15.5%
利益
260億円 56.9%
営業利益率20.6%
産業機器ほか産業設備・機器
売上
1,245億円 15.2%
利益
72億円 15.8%
営業利益率5.9%

※営業利益率と構成比は当サイト計算。丸め・調整により合計は全社営業利益と一致しません。DDSには半導体検査用部品も含まれ、260億円すべてをHDD利益とはみなしません。

02 / HDD ANATOMY

HDDは、こうして読み書き保存する。

円盤に保存し、磁気ヘッドで読み書きし、サスペンションで位置を支えます。

01
HDDのアクチュエータアームとサスペンション回転軸FPC(銅色の信号線)アームサスペンション磁気ヘッド(先端)
ACTUATOR ASSEMBLY

アームが動かし、サスペンションが整える

幅広い銀色部分がアーム、その先に続く細い板ばねがサスペンション、最先端が磁気ヘッドです。銅色のFPCは磁気ヘッドとHDD本体の制御回路を接続します。左の黒い部分は接続端子・回路部です。

出典:Malcolm Koo / Wikimedia Commons(CC BY 4.0、縮小のみ)
02
プラッタ上のサスペンションと磁気ヘッド
SUSPENSION

薄い板ばねが円盤上へ張り出す

回転中は先端の磁気ヘッドが円盤すれすれを浮上します。薄さ・軽さと姿勢制御の両立が必要です。

出典:Matthew Field / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0、縮小のみ)
03
指先に載せたHDD磁気ヘッド
MAGNETIC HEAD

先端に載る、極小の読み書き装置

黒い小片が磁気ヘッドを載せたスライダー。サスペンションが位置と姿勢を支えます。

出典:Roman Starkov / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小のみ)
日本発条の主力はTSA

DSAとCLAは、動かす場所が異なる微小アクチュエータです。TSAは両方を組み合わせ、より細かく位置を合わせます。

アーム全体大きく移動DSA中央部・手首CLA先端部・指先TSA3段階で制御

写真は構造理解のための一般的なHDDで、日本発条製品そのものではありません。

03 / COMPETITIVE MOAT

小さいからこそ、簡単にはつくれない。

世界シェア50%以上を支えるのは、部品単体の薄さだけではありません。

01

設計・解析・評価

ばねの挙動や荷重を解析し、設計から評価まで一貫して対応する。

02

生産技術

微細な板ばねとアクチュエータを、安定した量産へ落とし込む。

03

品質管理

清浄度とばらつきを管理し、高密度HDDの読み書きを支える。

04

設備・供給体制

生産設備を開発し、日本・中国・タイの3拠点から供給する。

※日本発条「2024年度 株主の皆さまへ」に記載された、顧客に選ばれる理由を基に整理。

HDD用サスペンション 世界シェア日本発条 50%以上

2位 TDK 40〜45%

各社推定値。日本発条は2025年3月時点、TDKはUnited Report 2025。算定範囲・基準は同一とは限りません。
1台あたりの搭載数PC用の最大10倍PC用は通常2個、データセンター用は最大20個。1個あたりの価格は公表資料で確認できません。
04 / DATA CENTER TAILWIND

ニアラインHDDは、大容量データを保存する。

ニアラインHDDは、データセンターなどで使われる大容量HDDです。中にある部品の役割を順番に見ます。

横にスワイプして流れを見る →

01AI・クラウド保存データが増える
02ニアラインHDD大容量データを保存
03円盤データを磁気で保存
04磁気ヘッド円盤へ読み書き
05サスペンションヘッドの位置を支える

円盤・磁気ヘッド・サスペンションはHDD内部の構成部品です。日本発条が供給するのは、磁気ヘッドの位置を支えるサスペンションです。

円盤の土台

HOYA

ニアライン向け約40%

アルミ製を含むニアライン向け3.5インチ基板市場の金額シェア。HOYA推定・2024年度です。

磁気ヘッド

TDKほか2社

製造は3社に集約

TDK、Seagate、Western Digitalの3社。TDKの推定シェアは15〜20%です。

THAILAND CAPACITY EXPANSION2026年7月16日発表

需要を供給能力へ変える。

タイ工場の新生産棟は約150億円。会社は今回分を含む製造設備投資を総額約350億円、段階的に実施する予定です。新棟の完成予定は2027年12月です。

約350億円
タイ工場・今回分を含む製造設備投資の総額
05 / EARNINGS GUIDE

増収より、利益への変換を見る。

増産費用を吸収して、DDSが20%前後の利益率を維持できるかが焦点です。

DDS事業の推移

年度売上高営業利益利益率
2024年3月期671649.6%
2025年3月期1,11526623.9%
2026年3月期1,26726020.6%
2027年3月期予想1,44030020.8%

単位:億円。2027年3月期は会社予想。利益率は当サイト計算。

2027年3月期 会社予想
売上高8,600億円+5.3%
営業利益590億円+28.9%
営業利益率6.9%+1.3pt
EARNINGS CHECKPOINTS

決算で追う6つの進捗ポイント

  1. 01
    DDS売上高と利益率数量増が利益へ変わったか
  2. 02
    サスペンション数量年10〜15%成長の前提
  3. 03
    売価と製品構成TSA・高多層HDD向け
  4. 04
    タイ増産の固定費人員・設備・減価償却
  5. 05
    懸架ばね・シート低採算事業の改善
  6. 06
    米国・欧州拠点赤字・低採算拠点の改善
06 / EXPECTATION & RISK

期待の裏に、崩れる条件。

EXPECTATION

利益が伸びる条件

  • ニアラインHDDの生産台数が増える
  • 多層化で1台あたり搭載数が増える
  • TSAなど高付加価値品の比率が上がる
  • 増産後も高い稼働率を維持する
RISK

崩れる条件

  • HDDメーカーの在庫・発注調整
  • 記録密度向上で部品数量が伸びない
  • 約350億円投資の固定費が先行する
  • 自動車事業の低採算が改善しない
DDSの数量・単価・製品構成が、増産の固定費を上回れるかを見ます。
THE POINT

自動車会社として売上をつくり、
精密部品会社として利益をつくる。

日本発条の面白さは、巨大な自動車部品事業の中に、HDDと半導体に接続する高収益事業を持つことです。次の決算ではDDSの増収率より、利益率・数量見通し・増産費用を先に確認します。

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本ページは個人の分析・意見・思考プロセスの共有であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は公開情報に基づきますが正確性を保証するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

公開日 2026年8月4日(一次情報=決算説明資料・質疑応答等に基づく)