triplaは、ホテルや旅館などの宿泊施設に特化したSaaSを提供する企業(2015年設立・2022年11月 東証グロース上場)。AIチャットボット「tripla Bot」、自社サイト予約エンジン「tripla Book」、宿泊特化のCRM/MA「tripla Connect」、決済の「tripla Pay」などを揃え、宿が楽天トラベルやじゃらんといったOTA(旅行予約サイト)に頼らず「自社サイトで直接予約を取る」のを後押しするのが軸だ。2025年10月期(連結)は営業収益25.73億円(前期比+37.8%)・営業利益5.19億円(同+93.6%)と増収増益で、経常利益5.83億円・当期純利益5.0億円はいずれも前期比で約2倍となった。主力の「tripla Book」が売上16億円(同+34.6%)まで伸び、導入施設数は全サービス合計で9,992施設まで拡大。足元も増収増益が続き、2026年10月期上期(第2四半期累計・2026-06-15開示)は営業収益16.62億円(前年同期比+35.1%)・営業利益4.67億円(同+95.6%)。会社は同日に通期予想を上方修正し、営業収益35.01億円(+36.1%)・営業利益8.22億円(+58.4%)・当期純利益6.01億円(+20.0%)を見込む。
① どんな会社か(事業・収益源)
結論から言うと、triplaは「宿が自分のホームページから直接予約を取れるようにする道具一式」を売る会社だ。2015年に設立され、東京都新宿区に本社を置く(2022年11月 東証グロース上場)。社員190名・16カ国の出身者で外国人比率が約8割という多国籍企業で、日本だけでなくアジア太平洋を中心に事業を広げている(同社開示)。
宿泊施設の予約は、楽天トラベルやじゃらん、Booking.comといったOTA(旅行予約サイト)経由が大きい。便利な反面、宿はOTAに手数料を払うため利益が削られる。そこでtriplaは、宿の「自社サイトからの直接予約(直販)」を増やす仕組みを提供する。直販が増えるほどOTA手数料を回避でき、宿の手元に利益が残る——これがtriplaの価値の根っこだ。
サービスは宿泊特化のオールインワン構成になっている。問い合わせに自動で答える「tripla Bot」、数クリックで予約まで完結する予約エンジン「tripla Book」、宿泊客の情報を管理してリピートにつなげるCRM/MA「tripla Connect」、決済の「tripla Pay」などだ。
2025年10月期(連結・実績)は、営業収益25.73億円(前期比+37.8%)・営業利益5.19億円(同+93.6%)。なかでも主力の「tripla Book」が売上16億円(同+34.6%)まで伸び、全社をけん引した。
- 1宿泊施設はOTA(旅行予約サイト)経由だと手数料を払う
- 2tripla Bot(AIチャットボット)で問い合わせに自動対応
- 3tripla Book(予約エンジン)で自社サイトから直接予約を取る
- 4tripla Connect(CRM/MA)でリピート化、tripla Payで決済
- 5→ OTA手数料を抑え、宿の手元に利益が残る
出典:tripla 公式サイト・決算説明資料を基にした概念図。
売上の内訳は、主力のtripla Bookが全体の約6割を占める。Bookは宿の予約取扱高(GMV)に対して一定率の手数料(テークレート)を受け取るモデルで、宿の直販が増えるほど、また決済まで取り込むほど収益が積み上がる仕組みだ。
- tripla Book(予約エンジン)62%
- その他(Bot・Connect・Pay 等)38%
出典:tripla 2025年10月期決算説明(tripla Book 16億円)。『その他』は営業収益合計25.73億円からBookを差し引いた残り(Bot・Connect・Pay等の合算)として算出。単位は億円。
② 強み・濠(moat)
強みは、宿泊業に特化したサービスを一式そろえ、宿の業務に深く入り込んでいることだ。予約・問い合わせ対応・顧客管理・決済が一つにつながっているため、一度導入した宿は他社へ乗り換えにくい(スイッチングコスト)。
もう一つの濠は、収益が積み上がる構造にある。主力のtripla Bookは宿の予約取扱高(GMV)に連動した手数料収入で、宿の直販が増えるほど収益が伸びる。同社開示によれば、足元のBook国内取扱高(GMV)は年換算(第4四半期実績の年率換算)で約1,744億円、第4四半期のテークレート(取扱高に対する収益率)は1.24%と過去最高を更新した。決済(tripla Pay)を通す比率を上げるとテークレートが上がるため、同じ施設数でも1施設あたりの収益が伸びる余地がある。
出典:tripla 2025年10月期決算説明。第4四半期のテークレートは過去最高の1.24%。GMVは第4四半期実績(約544億円)の年率換算で約1,744億円。
- 特化×一式:宿泊業に絞り、予約・問い合わせ・CRM・決済を一つにつないでいる
- 乗り換えにくさ:業務に深く入り込み、導入後はスイッチングコストが高い
- 積み上がる収益:Bookは取扱高(GMV)連動。直販が増えるほど収益が伸びる
- テークレート上昇余地:決済比率を上げると1施設あたり収益が伸びる(FY2025第4四半期のテークレート1.24%は過去最高)
- 多国籍×海外展開:社員の外国人比率約8割、アジア太平洋を中心に展開
同社開示に基づく整理。
③ 置かれている状況(市場と追い風・逆風)
追い風は、インバウンド回復による宿泊需要の拡大と、宿泊業界の人手不足だ。予約対応や顧客管理を自動化したいニーズが強く、OTA依存を下げて自社サイト直販を強めたい宿が増えている。triplaの導入施設数は全サービス合計で9,992施設(2025年10月期時点)と、1万施設に迫る規模まで広がっている。
海外展開も進めている。社員の外国人比率は約8割で、日本以外にベトナム・フィリピン・インドネシア・韓国・台湾・タイ・マレーシア・シンガポール・オーストラリアなどで事業を展開する。2024年にはタイ・インドネシアなどで宿泊施設向けサービスを手がける海外企業を子会社化している(同社開示)。
一方で逆風・留意点は、業績が宿泊需要やインバウンドの動向に左右されやすいこと、そしてOTAや他のホテルテック各社との競合だ。新興のグロース企業ゆえ、事業拡大に伴う先行投資や採用負担も続く。
- 追い風:インバウンド回復・宿泊需要予約数↑
- 追い風:宿の人手不足→自動化ニーズDX需要↑
- 追い風:OTA依存からの直販シフトBook需要↑
- 追い風:海外展開・M&A市場拡大
- 逆風:景気・インバウンドの変動需要が振れる
- 逆風:OTA・同業との競合価格・機能競争
出典:同社開示・事業環境に基づく論点整理。投資判断ではない。
④ 業績の見方(着目すべき指標とその理由)
この会社を読むときは、まず「取扱高(GMV)×テークレート」と「導入施設数の純増」を見るのが要点だ。Bookの収益は宿の予約取扱高に連動するため、施設が増え、1施設あたりの取扱高が増え、テークレートが上がるほど積み上がる。2025年10月期はGMV(Book国内・年換算)約1,744億円・第4四半期テークレート1.24%(過去最高)・導入施設数9,992と、いずれも拡大した。
次に決済比率だ。tripla Payを通す事前決済の比率が上がるほどテークレートが高まる。2025年10月期は事前決済比率が当初目標の25%を超えて26.4%に達した。同社の中期経営計画(2026年10月期-2028年10月期)では、この決済比率を段階的に40%へ引き上げ、営業収益50億円を目指す方針を示している(同社開示)。
足元の進捗は増収増益が続いている。2026年10月期上期(第2四半期累計・2026年6月15日開示)は、営業収益16.62億円(前年同期比+35.1%)・営業利益4.67億円(同+95.6%)・経常利益5.37億円(同+99.6%)。これを受けて会社は同日、通期業績予想を上方修正した(営業利益は期初予想7.55億円→8.22億円へ)。
利益面では、段ごとに伸び方が違う点に注意したい。2025年10月期は営業利益+93.6%・経常利益と純利益が前期比で約2倍と大きく伸びた。修正後の2026年10月期会社予想は、営業収益35.01億円(+36.1%)・営業利益8.22億円(+58.4%)・経常利益9.27億円(+59.0%)に対し、当期純利益は6.01億円(+20.0%)と、利益の伸び率が下の段ほど小さい。これは前期(FY2025)の純利益に税負担の軽さ(繰越欠損金等の効果)が効いていた反動とみられ、本業(営業利益)の伸びと純利益の伸びは分けて見るのがよい。
出典:tripla 2025年10月期決算(実績)・2026年10月期通期会社予想(2026-06-15 上方修正後)。FY2025は前期比+37.8%、FY2026予想は同+36.1%。
出典:tripla 2025年10月期決算(実績)・2026年10月期通期会社予想(2026-06-15 上方修正後=8.22億円。期初予想は7.55億円)。FY2025は前期比+93.6%、FY2026予想は同+58.4%。
出典:tripla 2025年10月期決算(営業利益5.19億円 ÷ 営業収益25.73億円)。FY2026会社予想(修正後)ベースでは約23.5%。
- ① 取扱高(GMV)×テークレート:FY2025はGMV約1,744億円(年換算)・第4四半期テークレート1.24%(過去最高)
- ② 決済比率:26.4%→40%(中計目標)。上がるほど1施設あたり収益が伸びる
- ③ 営業利益と純利益の伸びの差:FY2026予想は営業利益+58.4%に対し純利益+20.0%(前期の税負担の軽さの反動とみられる)
企業を読むためのフレーム(質的整理)。
⑤ リスク
成長を続ける宿泊特化SaaSだが、リスクは正直に並べておく。
- 需要変動:業績がインバウンド・宿泊需要に左右される。景気後退・災害・感染症などで予約取扱高が落ちると収益に響く
- 競合:OTAや他のホテルテック各社との競争。直販シフトの流れが続くかは外部環境次第
- 海外・M&A:海外展開や子会社化に伴う、のれんの減損・統合リスク、為替の影響
- 利益の見え方:純利益は税負担の変動で前期比の伸びが営業利益とずれる(FY2026予想は営業利益+58.4%/純利益+20.0%)。本業の伸びと混同しない
- 規模・流動性:グロース市場の新興株で時価総額が大きくなく、株価の値動きが荒くなりやすい
リスク論点の見取り図(質的整理)。
参考文献
- tripla「2025年10月期 決算短信」(2025-12-15開示)・決算説明資料
- ログミーFinance「tripla、売上高営業利益ともに二桁成長で前年比増収増益『tripla Book』導入施設数拡大で成長加速」(2025年10月期 通期決算説明)
- tripla「2026年10月期 第2四半期決算・通期業績予想の修正」(2026-06-15開示)
- tripla「2026年10月期 第1四半期決算説明資料」(2026-03-17開示・適時開示/日経会社情報DIGITAL)
- tripla「事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年10月期-2028年10月期 中期経営計画)」(2025-12-15開示・PDF)
- tripla 会社概要(IR)
- 投資の森(5136 四半期業績・通期予想)※数値は決算短信で確認
- 四季報オンライン(5136)※参照のみ・数値は転載せず
- 株探(5136)
公開日 2026年6月16日(一次情報=決算短信・決算説明会等に基づく)