一言で言えば、フェローテックは「半導体工場の部品棚」を世界規模で持つ会社です。
装置メーカーの新設投資で売れる部品、工場が動くほど交換・洗浄が増える部品、AI光通信や電力変換で利益をつくる部品。この三つが同じ会社に入っています。
01装置投資真空シール・金属加工
02工場稼働石英・セラミックス・洗浄
03熱マネジメントサーモ・パワー半導体用基板
売上の主役と、利益率の主役は違う。
2026年3月期のセグメントを、売上構成と営業利益率の二軸で見ます。
全社売上2,889億円のうち1,851億円。真空シール、金属加工、石英、セラミックス、洗浄が中核です。
- 装置関連 64.1%
- 電子デバイス 19.9%
- 車載 10.1%
- その他 5.9%
電子デバイス
売上構成は19.9%ですが、サーモモジュールとパワー半導体用基板が高い利益率をつくります。売上の大きさだけでは、この会社の稼ぐ力を読み違えます。
※セグメント利益合計と全社営業利益の差は調整額です。製品別利益は非開示のため、石英と真空シールのどちらが高採算か、といった断定はできません。
製品を、実物で見る。
製品の形状と用途を具体的に検討するため、フェローテック公式写真を必要最小限・無加工で引用しています。出所は各画像の直下に明記します。

真空シール
箱にすき間をつくらず、外のモーターの回転だけを中へ伝える部品。半導体は、空気やほこりをできるだけ減らした箱の中で加工します。普通の回転軸ではすき間ができますが、磁石に吸いつく液体でそのすき間をふさぎ、真空と回転を両立します。
売上は金属受託加工と合算で492.18億円。会社は世界シェア首位と説明していますが、現在の比率は開示していません。引用:フェローテック「真空シール」(2026年8月5日閲覧・無加工)
石英製品
高温の処理室で、ウエハーを載せたりガスを通したりする耐熱ガラス部品。透明な筒、受け皿、輪、窓などに加工します。熱や薬品に強く、半導体へ余計な物質が混ざりにくいのが特長です。使ううちに傷むため、交換需要も生まれます。
2026年3月期売上343.76億円。素材を仕入れ、顧客の装置に合う形へ精密加工します。引用:フェローテック「石英製品」(2026年8月5日閲覧・無加工)
セラミックス
金属が傷みやすい場所で、装置を支える丈夫な部品。皿や輪のような形に加工し、高温や強いガスにさらされる装置内部で使います。金属よりさびにくく、削れた粉がウエハーへ付くのを減らせます。
2026年3月期売上406.62億円。京セラなども同じ用途の製品を持ちます。引用:フェローテック「ファインセラミックス」(2026年8月5日閲覧・無加工)
装置部品洗浄
汚れた装置部品を預かり、再び使える状態にして返すサービス。こびりついた膜を落とし、必要なら表面を塗り直し、検査して返却します。半導体工場が動くほど部品は汚れるため、装置を一度売って終わりではない保守の仕事です。
2026年3月期売上186.03億円。写真は、洗浄後に表面を整える設備です。引用:フェローテック「装置部品洗浄」(2026年8月5日閲覧・無加工)
パワー半導体用基板
大きな電力を扱う半導体を載せる、放熱性の高い土台。銅の回路とセラミックスを重ね、電気が漏れるのを防ぎながら熱を外へ逃がします。EV、鉄道、送電設備、産業機械などに使われます。
電子デバイス・車載の二つにまたがり、2026年3月期の合計売上は376.33億円です。引用:フェローテック・パワーセミコンダクター「AMB基板」(2026年8月5日閲覧・無加工)装置関連1,851億円の中身。
大きい順に並べると、真空・金属、セラミックス、石英の3群で装置関連売上の約67%です。
真空シール・金属加工
装置メーカーの受注、工場新設、増産投資が先行指標です。
石英・セラミックス・洗浄
既存工場の稼働率、交換周期、メンテナンス量が効きます。
パワー基板・サーモ
EV、産業電源、エネルギー、AI光通信の数量と価格が効きます。
製品ごとに、相手も勝ち方も変わる。
同じ半導体関連でも、製品ごとに競う会社と評価される性能が変わります。
空気やほこりを入れず、正確に回転を伝えられるかで競います。フェローテックは世界首位と説明していますが、現在の比率は非開示です。
純度、加工精度、短納期での量産供給が勝負です。比較できる定量シェアは確認できませんでした。
熱や強いガスへの耐久性、削れにくさ、寸法精度で競います。比較できる定量シェアは非開示です。
熱を逃がす力、壊れにくさ、量産時の品質と価格で競います。比較できる定量シェアは非開示です。
フェローテックの特徴は、一つの製品で独占することではなく、装置の内側に必要な材料・加工・洗浄を横に並べられることです。
中国が大きい。同時に、中国外も増やす。
中国の売上は大きいままです。その一方で、欧米顧客の要請を受けて中国外の工場も増やしています。
ただし集計は、最終顧客の国ではなく「売上を計上した会社の所在地」ベースです。中国比率は22/3期45%から25/3期60%まで上がり、26/3期に56%へ下がりました。長期で脱中国が進んだ、とまでは言えません。
605億円 → 1,613億円
22/3期から26/3期で約2.7倍。中国半導体の国産化需要を取り込むため、中国内の工場増設も続けています。
733億円 → 1,276億円
同じ5年間で約1.7倍。さらに欧米顧客の中国外生産要請を受け、マレーシア第2工場へ約333億円を投じます。
※上の売上額と比率はフェローテック公式「地域別売上高(連結)」から当サイト計算。端数処理により合計が一致しない場合があります。マレーシア第2工場は石英・セラミックス・金属加工を生産し、2026年内の稼働開始見通しです。
営業キャッシュフロー293億円に対し、投資キャッシュフローは▲669億円。投資が現金創出を大きく上回りました。
中国とマレーシアの両方で増産。新工場の稼働率と減価償却の吸収が、次の焦点です。
決算で追う、6項目。
2026年3月期の決算短信4本と、中間・通期の説明資料、質疑応答を確認しました。四半期同士の単純比較はせず、次の6項目を追います。
- 01半導体等装置関連の利益率売上増が8.7%の利益率改善へつながるか
- 02石英・セラミックス・洗浄工場稼働に連動する3群が伸びるか
- 03電子デバイスの18.2%AI光通信用サーモとパワー基板の採算
- 04設備投資と減価償却先行投資後の固定費を売上で吸収できるか
- 05営業キャッシュフロー会計利益が現金創出へ変わっているか
- 06中国・マレーシアの立ち上がり地域集中と新工場の稼働遅れを確認
フェローテックは、半導体をつくる装置の内側を、
真空・耐熱・洗浄・放熱で支える会社です。
中国では現地需要を取り込み、欧米・日本顧客向けにはマレーシアなど中国外の供給網をつくっています。投資家としては、装置関連の売上規模と電子デバイスの利益率を分け、巨額投資がキャッシュを生むまで追います。
出典・参考資料
- 2026年3月期 第1四半期決算短信 ↗
- 2026年3月期 第2四半期決算短信 ↗
- 2026年3月期 第3四半期決算短信 ↗
- 2026年3月期 決算短信 ↗
- 2026年3月期 決算説明・中期経営計画 ↗
- 2026年3月期 中間決算説明資料 ↗
- 2026年3月期 中間決算説明会 質疑応答要旨 ↗
- 地域別売上高(連結) ↗
- マレーシア・クリム第2工場建設のお知らせ ↗
- 会社四季報オンライン フェローテック(無料公開範囲) ↗
- 製品総合カタログ 2025 ↗
- 真空シール 製品ページ ↗
- 石英製品ページ ↗
- ファインセラミックス 製品ページ ↗
- フェローテック製品サイト ご利用条件 ↗
- AMB基板 製品ページ ↗
- DCB基板 製品ページ ↗
- SEMI 2026年半導体製造装置市場予測 ↗
- イーグル工業 磁性流体真空シール ↗
- 京セラ 半導体製造装置用セラミックス ↗
- ロジャース curamik セラミック基板 ↗
- トップ写真:L N / Unsplash ↗
- Unsplash License ↗
トップ写真はUnsplash Licenseに基づき使用しています。製品写真5点は装飾ではなく、各製品の形状・用途を具体的に検討する本文に隣接させ、引用部分を明確に区別し、必要最小限・無加工で掲載しています。各写真には「引用」、出所、閲覧日を表示しています。これはフェローテックから転載許諾を得たことを意味するものではありません。
本記事は公開情報に基づく企業理解のための資料であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は原則として会社開示資料を使用し、構成比・利益率の一部は当サイトで計算しています。
